サステナビリティ環境TCFD提言への対応

当社は2023年8月にTCFD※1提言への賛同を表明しました。

TCFD

当社は「人と自然の豊かな未来に貢献する」ことをビジョンに掲げ、気候変動対応を経営における重要課題の一つと位置づけています。私たちは、コーティングメーカーとしてできることを積み重ね、脱炭素社会の実現に向けてお客様の省資源化、省力化、環境負荷低減に貢献します。また、気候関連のリスクと機会に関する取り組みを積極的に行い情報開示に努めます。また、気候関連の開示規制業務がTCFDからISSB※2へと引き継がれたことを受け、今後の開示要請の動向を注視しながら、気候変動対応関連の開示のさらなる充実化を図っていきます。

  • Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)の略。気候変動が金融市場に重大な影響をもたらすとの認識が主要国の間で広がったことを背景に、各国の中央銀行・金融当局や国際機関が参加する金融安定理事会(Financial Stability Board、FSB)によって2015年に設立された。2017年に公表されたTCFD提言によって、企業等に対して気候関連の情報開示を推奨するとともに、気候変動関連の情報開示の枠組みを提示している。2023年10月に解散。
  • International Sustainability Standards Board(国際サステナビリティ基準審議会)の略。国際会計基準の策定を担うIFRS財団によって、国際サステナビリティ基準を策定するための新たな審議会として2021年11月に設置。TCFDの解散に伴い、2024年から企業の気候関連情報開示の進捗を監視する責任を引き継ぐ。

ガバナンス

当社において気候変動リスクの監督にあたる責任者は、代表取締役社長執行役員が務めています。

サステナビリティに関する方針の策定、計画の立案、取り組みの進捗確認を担う組織としてサステナビリティ委員会を設置し、気候変動に関する対応についても審議しています。同委員会は、代表取締役社長執行役員を委員長(責任者)とし、常勤取締役や各部門長などから構成され、基本的に年4回開催することとしています。

取締役会は、同委員会から気候変動を含むサステナビリティ課題全般に関する報告を受け、審議・承認を行っています。2021年10月に開催した取締役会では気候変動に関する目標を含む中期経営計画を、2021年12月に開催した取締役会では気候変動に関する取り組みを含むマテリアリティを承認しました。

サステナビリティ委員会は、常勤取締役、営業本部長、製造本部長、品質管理本部長、管理本部長、海外事業本部長、溶射技術開発研究所長、営業企画部長、環境推進部長、人事総務部長、海外事業部長、経理部長、経営企画部長から構成されています。このうち、役員以上の主要メンバーは以下の10名です。

氏名 役職名
小林 和也 代表取締役 社長執行役員
吉積 隆幸 代表取締役 専務執行役員​
後藤 浩志 取締役 専務執行役員 管理本部長​
水津 竜夫 取締役 常務執行役員 東京工場長
髙畠 剛 取締役 常務執行役員 製造本部長​
相坂 弘行 執行役員 品質管理本部長
中井 勝紀 執行役員 経営企画部長
中平 康樹 執行役員 海外事業本部長
濱口 竜哉 執行役員 営業本部長
寺谷 武馬 執行役員 溶射技術開発研究所長

戦略

2022年、気候変動に関するリスクと機会の洗い出しに着手しました。2022年6月にはトーカロ株式会社単体を対象範囲とし、主要なリスクと機会、およびその対応策を抽出しました。さらに分析を深化させるため、2023年6月にはそれぞれのリスクと機会について財務インパクトの試算を行い、その結果から特に重要と思われる対応策について指標および目標を設定しました。
2025年6月のアップデートでは、シナリオ分析における中期の設定を2030年から2035年へと見直しました。これを踏まえ、リスクと機会を算定するとともに、対応策の進捗状況を確認しました。
今後も、分析のさらなる精緻化とともに、設定した指標および目標に基づきリスク軽減と機会増加の対応策を推進していきます。

  • 対象範囲:炭素税の項目はトーカロ株式会社連結、その他の項目はトーカロ株式会社単体
  • 対象期間:現在~2050年
  • シナリオ
    ・脱炭素シナリオ(1.5℃~2℃):産業革命以降の世界平均気温上昇幅が1.5℃~2℃程度に抑えられた世界
    ・温暖化進行シナリオ(4℃):産業革命以降の世界平均気温上昇幅が4℃程度上昇する世界
  • シナリオ検討における参照資料
    ・IEA WEO 2023 NZE・SPS・APS
    ・IPCC第5次評価報告書 RCP2.6(2℃)、RCP8.5(4℃)
    ・IPCC第6次評価報告書 SSP1-1.9(1.5℃)、SSP5-8.5(4℃)

リスク・機会/対応策

区分 種類 内容 時間軸 事業への
影響
財務インパクト
【 】で注記を記載していないものは、+1.5〜2℃シナリオ・2030年度
対応策
移行リスク 政策・規制 カーボンプライシング制度導入に伴うエネルギー調達費の増加 中期~長期 炭素税 4.2億円
算出対象はトーカロ株式会社連結
2030年時点の炭素税額は175ドル/t- CO2と想定
為替レートは1ドル=143円で計算

再生可能エネルギー

  • グリーン電力の長期契約
  • 再生可能エネルギー(太陽光発電)の追加導入検討 (再生可能エネルギーへの切り替えによる再生可能エネルギー比率の向上)
  • 太陽光発電で発電した電気の蓄電方法の検討

設備

  • 生産性向上のための設備更新
  • エアコン、冷却設備、LED電球、コンプレッサーなどの省エネトップランナー機器への更新
  • ノンフロン設備への更新

車両

  • 社用車のハイブリッド車への切り替え
  • 電気自動車等の導入検討
カーボンプライシングの導入による資材調達費の増加 中期~長期 情報収集の強化
市場 石炭火力発電など、化石燃料を使用する発電設備向けのコーティング需要減少 短期~中期 火力発電等関連事業の売上高減少額 10.3億円(2024年度比50%減
火力発電等の減少率は、日本政府のエネルギー基本計画に基づく
水素・アンモニア・バイオマス等の代替燃料への技術対応
評判 気候関連課題への対応不備・開示情報不十分によるステークホルダーからの評判失墜、投資撤退・株価下落、人材獲得機会の喪失 短期~中期 CO2排出量の管理、開示情報の充実化
ステークホルダーとのコミュニケーション強化
開示情報の信頼性向上に向けた第三者保証取得の検討
物理リスク 急性 台風、豪雨、落雷などに伴う工場被災、作業中断による回復費用の発生

サプライチェーン分断による工程遅延・コスト増加
中期~長期 当社では臨海部に所在する事業所が多く、河川氾濫等の洪水よりも、高潮による浸水被害の発生リスクの方が高い。
高潮浸水想定区域に所在する6事業所※1において、浸水級の災害が1回発生した場合
操業停止による売上損失 65.8億円※2
被災する設備の回復費用 98.8億円※3


※1 事業所所在自治体のハザードマップにより、高潮浸水想定区域に所在する事業所は、名古屋工場、本社、明石工場、溶射技術開発研究所、倉敷工場、北九州工場の6事業所
※2 操業停止の日数は、国土交通省の治水経済調査マニュアルに基づく
※3 1回の浸水で、機械装置の70%に修理不能な故障が発生すると想定
高潮・高波による浸水リスクの高い海辺に立地する工場の防災計画、移転検討
落雷による瞬時停電対策(UPS導入完了、油圧コントロール機械の対策)
サプライチェーンを含めたBCP対策の強化
慢性 金属の需要増加、採掘減少による調達困難・価格高騰 中期~長期 加工材料費増加額 26.3億円
(2023年度比80%増

加工材料価格の上昇率は、当社が主に使用する金属材料の市場成長率予測に基づく
材料使用量の削減・効率化(リサイクルを含む)、価格転嫁
原材料である金属採掘規制に伴う鉱山変更によるサプライヤーの価格変動の注視
鉱山変更に伴う品質への影響把握、顧客の品質満足度の追求
海面上昇に伴う工場被災等 長期 【+4℃・2050年】
浸水想定地域に所在する名古屋工場で、浸水または近隣の大半が水面下となった場合
工場移転費用 16.4億円

2024年から2050年までの海面上昇0.3mと想定
情報収集の強化、浸水対策
熱中症や感染症など、従業員の健康被害増加 短期~長期 最適な空調による労働環境整備
機会 技術 気候変動に適応する顧客ニーズ、新規顧客獲得機会の増加による収益拡大 短期~長期 環境エネルギー関連事業の収益増加額 30.4億円(2024年度比150%増) 顧客のGHG排出削減(水素・アンモニア・バイオマス等の代替燃料、リサイクル設備など)に対応したコーティング技術の開発とPR
自然エネルギー発電の普及・効率化(風力、水力、地熱、蓄電池など)に対応したコーティング技術の開発とPR
原材料メーカーで使用するエネルギーが再生可能エネルギーに置き換わった場合、顧客へスコープ3のGHG排出ゼロコーティングの供給が可能であることのアピール
評判 コーティングが省エネ、GHG排出低減に結びつく技術であることの理解促進が進むことによる受注機会の増加 短期~長期 補修・再生関連事業の収益増加額 65.5億円(2024年度比92%増) 溶射コーティングのリーディングカンパニーであることの積極的なPR
      短期:5年以内
中期:2035年
長期:2050年
   
スクロールできます

リスク管理

気候変動に関するリスクを経営における重要リスクの一つと位置付け、各部門においてその管理に取り組んでいます。また、サステナビリティ委員会がリスク管理の状況を横断的に監視しています。取締役会では、こうした監視結果等の報告を受けて全社的な対応策を検討・決定しています。

とりわけ再生可能エネルギーへの切り替え、電力使用量の削減・効率化に関するKPIの進捗状況については、半期ごとにサステナビリティ委員会において審議するとともに、リスクを再評価しています。

指標及び目標

当社は、気候変動に関する指標及び目標を設定しています。これらの指標及び目標は、代表取締役社長執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会での検討ののち、当社取締役会に報告され、取締役等の審議・承認を経て策定されています。当社は、これらの指標及び目標を経営上の重要な指標と捉え、長期的な視点で気候変動の対応策を推進しています。

当社の使用するエネルギー(CO2換算)は、電気によるものが全体の85.84%にあたり、CO2排出量のほとんどを占めています。

日本政府は2021年10月に地球温暖化対策計画の改定を閣議決定し、2030年度温室効果ガスの排出量を、2013年度比で46%削減することを目標として設定しました。この計画を踏まえて、当社は、スコープ1および2の2030年度の温室効果ガスの削減目標を「2013年度比46%減(54%以下に抑える)」と設定するとともに、その中間目標として、2025年度までに単体ベースで2013年度排出量の54%以下を達成することを目指して取り組んでいます。

また、金属の需要増加および採掘減少による加工材料費高騰への対応策として、廃棄物リサイクル率の向上(2025年度目標40%)に取り組んでいます。

受注機会の増加への対応策としては、当社のコーティング技術が顧客の省エネ、GHG排出低減に結びつくことから、環境分野の受注金額(環境エネルギー機器、補修・再生品)に2050年度目標を定めて、コーティング技術の開発とPRを推進しています。

対応策 KPI(指標) 2025年度目標 2024年度実績 2023年度実績 2022年度実績
再生可能エネルギーへの切り替え、電力使用量の削減・効率化 GHG排出量(単体のScope1、2) 7,900 t-CO2
(2013年度排出量の54%以下を達成する)
7,146 t-CO2 7,819 t-CO2 6,990 t-CO2
材料使用量の削減・効率化(リサイクルを含む) 廃棄物リサイクル率 40% 60.0% 48.6%​ 33.1%​
顧客のGHG排出削減・省エネ、自然エネルギー発電の普及・効率化に対応したコーティング技術の開発とPR 環境分野の受注金額
①環境エネルギー機器
②補修・再生品
①2,000百万円
②8,500百万円
合計10,500百万円​
①2,033百万円
②7,157百万円
合計9,191百万円
①1,913百万円
②7,229百万円
合計9,143百万円
①1,326百万円
②6,401百万円
合計7,727百万円

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