サステナビリティ社外取締役座談会
当社はビジョン(2030年の目指す姿)「人と自然の豊かな未来に貢献する」と、ミッション「ESGを重視した継続的な成長による企業価値の向上」に基づき、社会課題の解決を通じた企業価値の向上を追求してきました。
当社のESG経営について、社外取締役の4名による座談会を実施し、現在の評価や今後の課題などを語っていただきました。
社外取締役(独立役員)
冨田 和之
1982年、松下電器産業(株)(現 パナソニック(株))入社。半導体プロセス・設備の開発を担当。以降、同社および関連会社で携帯電話の技術開発センター所長、環境・家電リサイクル会社の社長などを歴任し、2021年より当社社外取締役。そのほか、公益財団法人大阪産業局 技術アドバイザー、株式会社クオルテック 社外取締役(いずれも現任)を務める。
社外取締役(独立役員)
瀧原 圭子
1986年、医学博士(大阪大学)取得。2008年大阪大学保健センター(現 キャンパスライフ健康支援センター)兼大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学教授就任。以降、同保健センター長、大阪大学総長補佐、副学長を歴任。2018年より当社社外取締役。そのほか、大阪大学名誉教授、近畿車輛(株)健康推進センター長(いずれも現任)を務める。
社外取締役(独立役員)
鎌倉 利光
1990年、弁護士登録。同年、鎌倉・檜垣法律事務所(現 檜垣・鎌倉・寺廣法律事務所)入所。1995年より同パートナー弁護士(現任)。2019年より当社社外取締役。そのほか、(株)きんでん社外監査役(現任)を務める。
社外取締役(独立役員)
佐藤 陽子
1986年、太田昭和監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)入所。1990年、公認会計士登録。2011年に同監査法人 シニアパートナーを経て、2019年に公認会計士佐藤陽子事務所所長に就任(現任)。2020年より当社社外取締役。そのほか、日本金銭機械(株)社外監査役、山陽電気鉄道(株)社外取締役(いずれも現任)を務める。
現在のトーカロのESG経営について、
どのようにお考えでしょうか。
総評
- 具体的なKPIを用いてモニタリングするなど、持続的な成長を見据えてESG経営を推進している
- E(環境)については、事業内容そのものが社会課題の解決と通じていることもあり、社会に対して大きく貢献できている
- S(社会)については、ダイバーシティ推進室の設立や健康経営優良法人に認定されるなど大きく進捗。
しかし、社内への浸透を含め改善の余地あり - G(ガバナンス)は、コンプライアンス委員会やリスク管理委員会を設立し、公益通報制度を改正するなどここ数年で充実
“人的資本”への投資がESG経営と成長を両立させる鍵
鎌倉:表面改質技術は、それ自体が環境負荷低減に貢献するものです。事業の成長が環境貢献につながるという意味では、トーカロのESG経営と成長戦略は表裏一体だと思います。双方を一層伸ばしていくために、共通して重要となるのが人的資本への投資です。従業員が成長できる環境を作るために、より良い施策の導入に向けた議論が活発化していることを嬉しく思っています。
瀧原:ダイバーシティ推進室が設立されるなど、トーカロの人財に関する取り組みは、この数年で確実に整備されてきていますね。昨年、健康経営優良法人認定制度への応募を提案したところ、めでたく1回目の応募で認定に至ったことも素晴らしく思っています。
一方、マテリアリティにおける「ものづくりの高度化と品質向上」「多様な人財の育成と活躍」の進捗は注視しています。特に女性活躍の可能性はまだ残されています。近い将来、女性の工場長や取締役が出てくることが目標ではないでしょうか。ダイバーシティに対する意識を、全社に浸透させていくことが重要だと思います。
冨田:女性従業員の方々と面談して感じたのは、働き方への価値観は人それぞれであるということです。女性の管理職が増えていくことで、新しくワークライフバランスの視点がもたらされ、管理職の在り方というのも変わっていくのではないでしょうか。
佐藤:性別にかかわらず、一人ひとりが働き方やキャリアに対して異なる価値観を持っていますからね。優秀な人が遠慮することなくチャンスをつかみに行ける機会を創ることが大切です。女性の管理職もその一例で、ダイバーシティをさらに一歩踏み込んで考えるきっかけになるのではないかと思います。
他に今後解決・改善すべき課題があれば教えてください。
技術開発でビジネスの領域を広げる
瀧原:冨田さんの言うように、新しい領域へ溶射技術を応用しようとする姿勢をPRしていくことはとても大事ですね。同時に研究開発にも一層力を入れていくべきでしょう。
鎌倉:やはり技術力こそがトーカロの価値創造の源泉ですからね。これまで半導体分野が大きな売上を占めてきましたが、いかに他の分野を拡大していけるかがこれからの課題となるでしょう。これだけの高い技術力があれば、きっと実現可能です。また、国内だけでなく海外でも需要が高いのではないでしょうか。海外市場に注力することでさらなる成長が見込めると思います。
グローバル戦略のさらなる進化
瀧原:既にトーカロは海外子会社を持っていますが、グローバル展開だけでなく、日本の労働人口が減ることも考えると、海外の子会社の従業員教育等が益々重要になっていくのではないでしょうか。
冨田:おっしゃる通り、海外の子会社には、まだまだ成長できる伸びしろがあると思います。特に主力である半導体向け工場では、機密情報の関係から取引先の装置メーカーごとに生産ラインを分けなくてはいけないなど、効率性に難があります。グローバル戦略として、全体最適の工場運営を検討していくことも必要ではないでしょうか。
最後に、社外取締役として、今後どのようにトーカロに
貢献していきたいと考えられているかお聞かせください。
取締役会でも議論の活発化を
鎌倉:社外取締役の仕事とは、経営判断の前提となる事実関係に誤りや疑わしい点がないか、それが社会から理解を得られることなのかをチェックすることです。
私が委員長を務める指名報酬諮問委員会では、諮問事項以外の様々な事象も議論させていただいています。経営の根幹に係るような情報をいただくこともあり、そういった事項が議論できる体制は素晴らしいと思います。こうしたフランクな議論が、取締役会においても、決議や報告とも異なる「相談事項」として議論できるようになれば嬉しいですね。「やる」「やらない」を判断する時点から、取締役会で議論するべき事柄は多いと考えています。
従業員のウェルビーイングにつながるアドバイスを
瀧原:私も取締役会で議論すべき案件はもっと幅広くあれば良いと思っています。月1回の取締役会では、社内の取締役の方々がそれぞれどのような考えを持ち、どんな未来を見据えているのか十分には理解できないものです。だからこそ、より広いテーマを扱うことで、相互理解が深まり、より良い議論ができるのではないかと考えています。
今後の役割としては、現場の人々、管理職のウェルビーイングにつながるようなアドバイスを増やし、トーカロの健康経営やダイバーシティに貢献していきたいと思います。
現場の変化を感じ、ガバナンスの乱れを未然に防ぐ
佐藤:より一層現場を知ることでガバナンスの強化に貢献していきたいと思います。トーカロは風通しの良い社風があり、業績も良好です。若い人財も多く入社していて、当面の問題は無いようにも思えます。しかし好調が続くとは限らないのです。不正がなされてしまう前に、ガバナンスを崩しかねない小さな芽を摘んでいくのが社外取締役の役割だと思っています。工場をはじめとした現場に行かせていただくことが、そのようなちょっとした変化に気づくためにとても重要なのです。現場の声を聞くことで、より密接にトーカロの変化を感じ取っていきたいと思います。
成長を願うからこそ、ステークホルダー目線で指摘したい
冨田:私も社外取締役となってから2年かけてトーカロの全ての工場を見学しました。その都度、工場長に工場運営や地域貢献への思いを聞いてきました。役員会では聞けない現場の従業員の声を聞くことで、トーカロにもっと成長してもらいたいと改めて実感しました。一方で、ステークホルダーの視点に立ち、社内の取締役の方とは異なる観点で経営に指摘を入れなくてはいけません。成長を志す思いは共有しながらも、外部の視点でモニタリングしていくことをこれからも大切にしていきたいと思います。