温暖化による気候変動や資源枯渇などの環境問題は、私たち人類と地球社会の存続・繁栄を脅かす重大な課題となっています。トーカロが長きにわたって磨いてきた「表面改質技術」は、部材表面に耐熱性や耐食性、耐摩耗性などの多彩な機能を付与します。それによって幅広い領域で省エネ化による温暖化ガス排出削減や、部品の長寿命化による資源使用量節約などに貢献しています。
温暖化防止❶各種製造装置の
エネルギー消費を削減
無駄な加熱を省く
気候変動の原因となる温暖化ガスを削減するためには、排出源となる電力などのエネルギー使用量を削減することが重要です。トーカロは、加熱装置に輻射(放射)効果のある膜を施工することで、装置のエネルギー使用量削減に貢献しています。
例えば、熱媒体(空気)の少ない減圧環境下で加熱を行う装置の場合、条件によっては加熱時間を従来から40%削減できたり、ヒーターの設定温度を10%程度低くできるため、その分のエネルギー使用量を削減できます。また、ナッツなどを空気中で焙煎する装置の場合も、従来より均一な加熱が可能となります。そのため、加熱に必要なエネルギー を削減でき、さらには品質・歩留まり向上も見込めます。
大型部品を一括でかたちづくる
一般に、樹脂も金属も、いくつかの細かい部品をそれぞれ成型/鋳造した後にそれらを組み合わせるよりも、最初から大きな一つの部品として成型/鋳造するほうが、必要なエネルギー(電力・ガスなど)は少なくてすみます。しかし、成形も鋳造も「熱で溶かされた材料が金型に流し込まれ、金型が熱を奪うことによって材料が冷えて固まる」というプロセスを経るため、金型が大きくなれば、その全体に樹脂や金属が行き渡らないうちに冷えて固まってしまい、不良品が発生しやすくなります。
こうした課題の解決に役立つのが、金型表面へのセラミックコーティングです。これによって材料が冷えて固まるまでの時間を少しだけ延長できるため、大型の金型でも全体に材料を行き渡らせることが可能になります。また、これによって金型点数も減るため、保管業務やメンテナンスの手間が削減でき、生産現場の働き方改革にもつながります。
回転物を理想的な状態で維持
発電機やエアーコンプレッサの中核部品は、気流とぶつかりながら回転する部品です。しかし、気流が繰り返しぶつかって削られたり、なんらかの粒子が付着してしまうことによって回転のバランスが崩れてしまうことがあります。その状態で長期間使用すると、そのエネルギーロスは積み重なり、莫大なものとなります。
しかし、気流が衝突する部分を最適な表面に改質することによって摩耗や付着の発生を劇的に遅らせ、初期の理想的な状態を長期間維持することが可能になります。
回転する部品を軽量化
近年、カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)が機械部品として使用されることが増えています。CFRPは金属よりも軽く、移動や回転に必要なエネルギーが少なくてすむため、温暖化防止に寄与する素材と言えます。しかし、一部の回転部品は高い耐摩耗性が必要とされるため、素材を金属からCFRPに切り替えることが困難でした。
そこでトーカロでは、CFRPの上に硬いサーメット合金を溶射被覆して鏡面仕上げを施すことで、高い耐久性を持ちながら軽量な回転部品を実現。エネルギー使用量の削減につながっています。
温暖化防止❷再生可能エネルギーの活用を支える
風力発電設備の耐久性を向上
自然の力を利用した「再生可能エネルギー」の一つである風力発電は、欧米ではすでにインフラとして広く普及しています。国内でも近年、巨大なプロペラを目にすることも増えてきました。
発電機に使用されるベアリングは、内部電流によるスパークが発生して損傷する懸念がありますが、当社のセラミックコーティングを利用した「絶縁ベアリング」により、損傷を防ぎ長期の安定操業が可能になります。
水力発電設備の土砂による摩耗を防ぐ
水力発電に利用される河川の水には大小さまざまな土砂が混じっています。そのため、なんらかの対策をしない場合、すぐに発電用水車の羽根が摩耗してしまい、発電効率が低下します。
トーカロが開発した耐土砂摩耗コーティングは、土砂摩耗試験において、ポンプ部品によく使用される「高Cr鋳鋼」と比べ、最大19倍もの耐久性を達成します。また、大きな流石の衝撃にも皮膜が割れない高い靭性(ねばり)も有しています。
バイオマス発電設備の長寿命化を支える
バイオマスとは、一般的には「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」とされており、身近なものでは食品残渣や家畜の糞尿などがあります。バイオマス発電はこれらの資源を直接またはガス化して燃焼させることによって電気を生み出します。
トーカロは、高温の燃焼ガスに曝されるボイラ伝熱管に「耐高温腐食皮膜」を、大気汚染物質の硫黄酸化物を排煙から取り除く装置の部品に「耐摩耗皮膜」を形成することで、その長寿命化に貢献しています。
温暖化防止❸自動車の燃費向上に
貢献
軽量化に貢献する高張力鋼板の生産に寄与
自動車業界では、CO2排出量を削減するために燃費向上が大きな課題となっています。そこで車体の軽量化のために、薄く、かつ十分な強度を有する高張力鋼板が使われています。
この高張力鋼板を高品質に安定して生産するために、トーカロの表面改質技術が活かされています。高張力鋼板の製造ラインでは、搬送ロール表面に異物が固着しやすく、それが鋼板に傷を作る原因となります。その対策としてロール表面に溶射皮膜を形成し、異物の固着を抑制しています。
資源保全機工部品の機能回復に必要な材料の使用量を削減
機能劣化時に表面だけを再施工
トーカロは、表面改質技術によってさまざまな機能を付与し、部品を「長寿命化」することで資源保全・廃棄物削減に貢献しています。また、例えば、表面改質したブッシュや軸受けなどの機工部品であれば、長期間の使用によって表面の機能が劣化した場合、表面の再施工だけで再使用が可能となる場合も多いです。機工部品全体を新しいものにする必要がなくなるため、材料となる資源の使用量を減らすことができます。さらに、トーカロは、無潤滑環境での摩擦摩耗試験を繰り返し続けることで、驚異的な「超低摩擦溶射膜」の開発に成功しました。ブッシュや軸受けなどにこの膜を施工すれば、潤滑用オイルの使用量を大幅に削減することができます。